お茶の水女子大学ジェンダー研究センター(IGS)は、2006年9月から2006年11月まで、オーストラリア国立大学(ANU)のジュディ?ワイスマン氏を客員教授としてお迎えすることになりました。
ワイスマン教授は、ANUのほか、London School of Economics研究員、ハーバード大学、スウェーデンのルレラ工科大学、スイス連邦工科大学、ウィーン大学、オックスフォード大学インターネット研究所などの客員教授を歴任し、オーストラリアと欧米の研究機関を中心に精力的な研究活動を繰り広げています。
氏の専門は社会学ですが、テクノロジーと社会に関わるジェンダー分析という研究領域においては、先駆的な存在です。The Social Shaping of Technology(共編著、1985)を皮切りに、著書Feminism Confronts Technology(1991)、およびTechnoFeminism(2004)では、テクノロジーとフェミニズムの研究を本格的に展開しました。また、1998年に刊行したManaging Like a Man: Women and Men and in Corporate Managementや最新の著書、The Politics of Working Life (共著、2005)では、テクノロジーの変化と働く場所の変化に伴う、男女の関係やアイデンティティについて考察しています。
今回、ワイスマン教授は「ジェンダーとテクノサイエンス」というテーマのもとに、5回連続の夜間セミナーを行います。氏の研究は、社会科学、人文科学、科学技術を専門とする研究者にとって興味深く、示唆に富むものであると同時に、雇用現場の経営及び労働に従事する方たちにも有益なものとなりえると思われます。大学内外に開かれたセミナーですので、皆様ふるってご参加ください。
今回のセミナーでは、総体として、フェミニズムの立場から情報通信技術に関する社会研究を行う際の多様なアプローチの概念的基盤を提供したい。すなわち、技術および技術とわれわれとの関係を形成するさまざまに入り組んだ力について、詳細な経験的探究を行うための適切な理論的枠組みや学術ツールを提供しよう考えている。ジェンダー研究も科学技術論(STS)研究も共に歴史学、社会学、カルチュラル?スタディーズ、コミュニケーション研究、政治理論、法学、経済学、科学研究に依拠しているので、ここでは当然ながら学際的アプローチを必要とすることになろう。この意味で、本コースでは受講者に、ジェンダーと技術に関する分析が分野横断的なスキルをどのように必要とするかについて、一つのパラダイムを提供する。
第1回(10月3日) ジェンダーとテクノサイエンスのポリティクス
Introduction: Gender and the Politics of Technoscience
L.. Winner (1985 and 1999). 'Do Artifacts have Politics?' in Donald MacKenzie and Judy Wajcman eds. The Social Shaping of Technology, Second Edition, Milton Keynes: Open University Press.
(邦訳 『鯨と原子炉—技術の限界を求めて』ラングトン?ウィナー著、吉岡斉?若松征男訳、紀伊国屋書店、2000)
Introductory essays in Donald MacKenzie and Judy Wajcman (eds) (1985 and 1999) The Social Shaping of Technology: Second Edition, Milton Keynes: Open University Press.
第3回(10月17日) テクノロジー、仕事、男らしさ
Technology, Work and Masculinity
Judy Wajcman (1991). 'The Technology of Production: Making a Job of Gender', Chapter 2, Feminism Confronts Technology. Cambridge: Polity Press.
C. Cockburn (1983). 'The Material of Male Power' in Donald MacKenzie and Judy Wajcman eds. Fuller version Brothers: Male Dominance and Technological Change, Pluto Press.
第4回(10月24日) コンピューター文化:サイバースペースで生きる方法
Computer Culture: Living in Cyberspace