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2026年5月18日更新
ウニ類は、受精や初期発生の研究において古くから重要なモデル生物として利用されてきました。また、水産資源としての価値や海洋生態系における役割も大きく、配偶子を効率的に利用する技術の確立が求められています。
本研究では、清本教授が2019年にバフンウニを用いて報告した、抗生物質を添加した海水と冷蔵保存を組み合わせた簡便なウニ精子保存法(保存法の詳細は湾岸生物教育研究所ホームページに掲載)について、バフンウニに加え、ムラサキウニ、アカウニ、キタムラサキウニ、タコノマクラの計5種を対象に試験し、その有効性を検証しました。
その結果、保存した精子は少なくとも4週間、種によってはそれ以上の期間にわたり受精能力を維持できることが確認されました。保存期間が長くなるほど、同じ受精率を得るために必要な精子濃度は高くなる傾向が見られましたが、高濃度の精子を用いることで長期間保存後でも高い受精率を得ることが可能でした。また、保存精子で受精した胚は正常に発生し、形態的な異常は認められませんでした。
さらに精子の運動性を詳細に解析したところ、保存期間の経過とともに鞭毛の運動周波数は徐々に低下するものの、鞭毛運動の波形自体はほとんど変化しないことが明らかになりました。この結果は、保存期間中においても遊泳能力を保持した精子が一定割合存在し、それらが受精能力を維持している可能性を示唆しています。
一般に動物の精子保存には凍結保存が用いられますが、凍結保存にはプログラムフリーザーや液体窒素などの高価で大規模な設備が必要であり、さらに種ごとに条件検討が必要となるという課題があります。これに対し、本研究で呈示した手法は、保存期間こそ1?2か月程度に限られるものの、抗生物質と冷蔵庫のみで精子保存が可能であり、種を問わず利用できるという点で、汎用性と簡便性において大きな利点を有しています。
近年、多くのウニ類の資源量は減少傾向にあります。貴重な親個体を節約しながら、安価かつ簡便に研究?教育?産業利用を推進できる本手法は、短期間に繰り返し実験を行う発生学研究や環境毒性試験に有用であるだけでなく、水産分野における種苗生産機会の拡大や、教育現場での利用機会の増大にも貢献することが期待されます。
本成果は、2026年 5月15 日(日本時間)付けで、発生?生殖生物学分野の国際学術誌『Zygote』に掲載されました。
A simple method for several-week sperm preservation applicable for various echinoid species.
Sumio Udagawa, Yuuko Wada, Ryuta Yoshida, Masato Kiyomoto
Zygote, published online.
https://doi.org/10.1017/S0967199426100458

図1 8週間保存した精子で受精したキタムラサキウニの発生過程。形態などに異常はみられない。

図2 保存したバフンウニの精子の鞭毛運動波形。保存期間を通じてほとんど変化が見られず、安定して遊泳できる精子が残っていることが分かる。
【研究に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 湾岸生物教育研究所 教授 清本正人
電話: 0470-29-0838
Email: kiyomoto.masato@ocha.ac.jp
【取材に関する問い合わせ先】
お茶の水女子大学 広報?ダイバーシティ推進課(広報担当)
電話:03-5978-5105
Email: info@cc.ocha.ac.jp